喫煙

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タバコの煙を吸引するためのさまざまな器具 (1)シガーボックスとカッター (2)葉巻 (3)各種パイプ (4)フーカー(水パイプ) (5)線香 (6)ボング
タバコの煙を吸引するためのさまざまな器具 (1)シガーボックスとカッター (2)葉巻 (3)各種パイプ (4)フーカー(水パイプ) (5)線香 (6)ボング

喫煙(きつえん)とは、一般的にタバコを吸引する事を指す。植物を乾燥・発酵などの工程を経て加工した物に火をつけて、その煙を吸引する行為を喫煙と呼ぶ。タバコ覚醒剤麻薬大麻などの喫煙がなされるが、ここでは主にタバコの喫煙について記述する。

目次

概要

タバコの吸殻
タバコの吸殻

タバコ喫煙の起源は紀元前10世紀の頃・地域はマヤ文明とされ、古くからアメリカ先住民の間に喫煙の習慣が広まっていた。大航海時代の到来と共にヨーロッパに伝播し、様々な薬効があると信じられたことと強力な依存形成作用があいまって100年間という1516世紀当時としては異例な速度で全世界に広まった。そのため、世界で「tobacco」「tabaco」などとほぼ同じ名前がついている。ヨーロッパ・アジア地域においても、大麻などの喫煙習慣があったとされるが、起源は明らかでない。葉巻、パイプなど様々な喫煙方法が考案され普及しており、今日世界的にもっともポピュラーな喫煙方法は安価で手軽な紙巻きタバコ(シガレット)である。21世紀初頭の世界の喫煙人口は約13億人でやや増加傾向にあるが、その多くは発展途上国による需要であり、主要先進国を始めとした主な地域では減少している。

医学的観点からは喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身疾患であり、喫煙者は“患者”とされる[1]。世界保健機関は、喫煙を原因とする病気による死亡者数は世界で年間推定約500万人以上と発表している。

一方、こうした世界保健機関等の調査研究には、タバコ産業従事者からの批判もある。とりわけ、過剰な禁煙運動に導かれた統計的数字などは、ランダムサンプリングといったデータ抽出法の形式をとりながら、データを恣意的に操作している場合もあるとの批判もある。

詳細は「禁煙ファシズム」を参照

喫煙習慣の有害性が明らかになった近年では、学会や行政の啓発活動によって、欧米での喫煙率は概ね低下しており、社会的に分煙または受動喫煙防止の運動も見られる。現在140ヶ国以上が、煙草消費の削減を目的とした煙草広告・販売への規制を実施している。

一般人が簡単に購買できるにもかかわらずタバコの毒性は高く、誤飲や大量摂取により急性ニコチン中毒を起こし、場合によっては死亡することもある[2]

タバコは中枢神経作動薬であるニコチンを含むが、ニコチンには強い依存性があることが知られている[3]。喫煙の依存性は、喫煙者のうち5割以上の者が禁煙の失敗を経験しており[4]、禁煙の成功率は5~10%程度である[5]。また、ニコチンの中断により離脱症状を生じるが、これはニコチンの投与によって軽減する。

喫煙の歴史

タバコの喫煙は、ヨーロッパの探検家が到達する前から、アメリカ先住民によって行われており、1500年前のマヤ文明における美術作品にも喫煙が描かれている。マヤ人たちはタバコを生贄を捧げる儀式、占い、魔除けといった宗教的な用途で用いていた。また、北米のインディアンは、現在も宗教的な儀式にタバコの葉を用いている。インディアンたちの喫煙法は、地面に浅い穴を掘り、枝や土でドームを作り、中でタバコの葉を燻した煙を、何箇所か開けた穴から跪いて吸うというものだった。また、粘土で作ったパイプも使われており、あまり首の曲がっていない、直管型のものだった。このクレイパイプは、数千年前のインディアンの遺跡からも出土している。

1492年10月12日クリストファー・コロンブスは乾燥したタバコの葉をアラワク族から与えられたが、興味を示さずうち捨ててしまった。その後ロドリゴ・デ・ヘレス (Rodrigo de Jerez) とルイス・デ・トレス (Luis de Torres) が喫煙を目撃した最初のヨーロッパ人となり、ヘレスがアメリカ州の外で喫煙した最初の人物として記録されている。16世紀には喫煙の習慣は主に船乗りの間で一般的なものであった。1560年代ジョン・ホーキンス (John Hawkins) の船員によってイングランドにもたらされたが、1580年代に至るまで大きな影響を与えることはなかった。イングランドでは1820年代後期から広く浸透し始めた。1828年、スペインで紙巻きタバコ(シガレット)が登場し、一定の商業的な拡張をもたらしたが、20世紀初頭に安価な機械製造法が普遍化されると、その依存性により爆発的に喫煙人口が増加した。

第一次世界大戦の間、タバコ製品は典型的な軍事補給物資の一つであった。以降、紙巻きタバコを用いた喫煙は、魅力的で気楽な生活様式の一部としてタバコ会社により宣伝され、女性の喫煙も社会の中に浸透し始めた。


喫煙の有害性に関する歴史

スペイン・イングランドにタバコの広まり始めた16世紀初頭に、タバコの有害性に関する議論が始まった[要出典]。喫煙は病気の治療や愉しみとして賞賛される一方、を害すると批判もされた。喫煙の害益についての議論は喫煙習慣が広まるにつれ過熱する中、タバコに関する科学研究も増えてさまざまなデータが蓄積されていった。

1900年、生命統計学者らが肺癌の増加を指摘(喫煙と疾患の関連を示唆した最初とされる)。その後さまざまな研究が行われ、タバコやタバコ煙の成分が分析され始めた。やがて臨床的・病理学的・疫学的に、タバコの人体への影響の研究が進み、1930年には肺や循環器疾患の発症率や死亡率の上昇が指摘された。その後もさまざまな国・研究機関でタバコの研究は増えていき、ドイツではナチス統治下で、またアメリカ合衆国では1938年ごろ生物学者レイモンド・パール (Raymond Pearl) が、タバコは健康に悪影響を及ぼすと発表している。

1939年から1963年の間に、肺癌に関してだけで29の逆向き研究が行われ、1952-1956の疫学研究の発表以降、喫煙と肺癌の関係が特に注目されるようになり、1950年代から1960年代の間に医学界や各国政府[6]のコンセンサス「喫煙は、特に肺癌や心臓血管疾患に関して健康を脅かす」が発表された。リーダーズ・ダイジェスト誌も、喫煙がいかに公衆衛生に害を及ぼすかを示すことによって喫煙率を減らすキャンペーンを始めた。

1954年初頭、タバコ産業の代表者らは、喫煙と健康の問題研究を後押しする目的で、「たばこ産業研究会」(Tobacco lndustrv Research Committee/TIRC)を設立し、研究に積極的に資金提供・情報収集を行い、喫煙が健康を害するとの科学的な証拠はないと示した。

近年、喫煙率は先進国では減少しているが、全世界でのタバコの製造はいまだ増加傾向にある。また、アジア諸国での喫煙率は依然高く位置している。かつては喫煙についての制限はかなり緩く、職場、病院、旅客機や列車・バスなど公共の場などにおける喫煙が規制されていなかった。当時、非喫煙者は職場や公共施設において受動喫煙を避けられない状況であった。1970年代から喫煙に関する健康への悪影響が問題視されるようになり、禁煙活動や嫌煙分煙とも)活動が推進され、公共の場などにおける受動喫煙防止の動きが徐々に進んで行った。また、都市部では防災上の理由から1980年代より喫煙場所が制限され、さらに公共交通機関での喫煙行為を全面的に禁止するなどの動きも見られるようになった。

以前と比べ多くの禁煙活動が進んだものの、2008年現在、世界保健機構 (WHO) は「世界各国で喫煙による死の予防が不十分」としている[7]


日本における歴史

日本では室町時代末期から安土桃山時代ポルトガル宣教師たちによって持ち込まれた。煙管(キセル)による喫煙が主であり、江戸時代初期には全国に普及したが、非常に高価な薬品として普及しており、喫煙できるのは裕福な武士か商人のみであった。

江戸幕府は火災予防や奢侈禁止の観点からしばしば煙草禁止令を出しているが、幕府や藩の専売とすることで次第に許可されていく。江戸中期には煙草の値下がりと共に庶民への喫煙習慣も広まって行くことになる。宝暦年間には、庶民用の煙草10匁(約38グラム)が8文ていどであった記録が残されている。また、この時期に煙管、煙草盆、煙草入れなどの工芸品が発達した。

明治時代になってから、それまでのキセルによる喫煙に代わり紙巻タバコが庶民の間に普及した。当初日本には2社のタバコ会社が存在していたが、日清戦争開始後に財政難に陥った国により 葉たばこ専売法が1898年に制定され、タバコは専売化された。当時、タバコによる税収は国税において大きな割合を占めており(1945年には、タバコによる税収は国税の20%をも占めていたという)、日清・日露戦争などの戦費調達のための財源とされた[8]

第二次大戦後も、1985年まで日本専売公社によるタバコの専売が続いた。1980年時点では、輸入タバコには90%の関税がかけられ、国内市場における輸入タバコのシェアは1.5%未満に過ぎず、海外タバコ企業が日本国内でテレビ・雑誌・看板などの宣伝活動や市場調査を行ったり販売網を築いたりすることはできなかった。しかし、1980年の米国 フィリップ・モリス社の5ヵ年計画において、日本に対し市場を開放するよう圧力をかけることが計画され[9]、1982年、米国通商代表部(USTR)は日本政府に対し、関税の90%から20%への引き下げ、海外企業の宣伝活動や市場調査の許可を求め交渉した(経済制裁の脅しも持ち出されたという[10])。1985年、日本専売公社は日本たばこ産業に民営化され、1987年には米国タバコへの関税は撤廃された。結果として、米国からのタバコ輸入本数は1986年に99億本、2002年には780億本へと増加し、米国のタバコ輸出の61%を占めるまでになった[11]。また、日本たばこ産業は民営化されたとはいえ、日本たばこ産業株式会社法により財務省が過半数の株を保有しており、歴代の国税庁長官が天下るなど財務省の天下り先の一つになっている。

原材料と煙の成分

詳細はタバコを参照。

タバコはナス科 Nicotiana 属の一年草で、亜熱帯性の植物である。タバコの煙に含まれる化学物質は4,000種ほどで、そのうち約200種は致死性有害化学物質とされ、動物にを作るものはベンゾピレン(ベンツピレン)をはじめとする60種類。天然のタバコ葉由来の成分の他、紙巻タバコ工場では600種類の有害化学物質を添加。

主なタバコ煙の成分:

主な発癌物質:

喫煙方法と種類

「葉巻きタバコ」と「刻みタバコ」の2種に大別される。葉巻きタバコはタバコの葉を刻まずに丸めて吸うもので、刻みタバコをタバコの葉で巻いたものも存在する。刻みタバコはその形態によって、さらにいくつかに分類される。

葉巻タバコ

葉巻4種
葉巻4種

詳細は「葉巻きタバコ」を参照

葉巻きタバコはもっとも原始的なタバコの形態であり、乾燥し発酵したタバコの葉を巻いて作られている、発祥はメソ・アメリカ文明からといわれており[誰?]古くから貿易品として利用されてきた。

種類は大きく分けて、湿度管理の必要なプレミアムシガーと管理の必要のないドライシガーがある。


刻みタバコ 刻んだタバコを、紙に巻くか、器具に詰めて吸う。


紙巻きタバコ

一般的な紙巻きタバコ
一般的な紙巻きタバコ

詳細は「紙巻きタバコ」を参照

一般にタバコという場合、これを指す。シガレットとも呼ばれる。パイプ等の喫煙用具を必要とせず着火すればそのまま吸えるので、喫煙者に広く普及している。手軽な反面、必ずフィルター部分を中心に一定量の廃棄部分が発生するためポイ捨てされる事も多い。1本あたりの平均的な燃焼時間は3–5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。火のついた先端は非常に高温で800度近くにもなるので、扱いには注意を要する。紙巻き煙草の税率が高いEUでは、あらかじめ長い煙草を作り、自分で切ってさや紙に詰める製品もある(ドイツのStax Trio Zigaretten等)。


手巻きタバコ 紙巻きタバコに対し高額な税金が課されている欧州などの国では、刻みタバコとシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も行われる。手巻き方法は、シガレットペーパーを一枚取りだし、折り目に刻みタバコを摘んで並べる。舌でシガレットペーパーの糊付け部分を湿らせて筒状に丸める。人によってはフィルターを吸引口に装着したり、添加物を加えることもある。

パイプ

イタリア・サビネリ社製のパイプ
イタリア・サビネリ社製のパイプ

詳細は「パイプ (タバコ)」を参照

主にアメリカヨーロッパ等で使われる喫煙具。刻みタバコと香料を加えたものを詰めて吸う。欧州では19世紀ごろまでは、労働者等の大衆の喫煙方法とされていた。フィルタが存在せず煙路が長いため煙温も低く、紙巻きに比べタバコを味わうのに向いている。落ち着いて吸わないと途中で火が消えてしまうので、喫煙を時間を掛けて行う喫煙具と言える。葉の分量は概ね、紙巻きタバコ3–4本程度。ただし紙巻きタバコと違って、吸った煙は飲み込まず、口腔内でふかすようにして喫煙する。このため、口腔粘膜からニコチンを摂取することになり、紙巻きタバコよりも効率良く、多くのニコチンを吸収することになる。結果として、パイプを1時間程度掛けて一服することにより、紙巻きタバコ10本程度をチェーンスモーキングする程の充足感が得られ、場合によっては非常に経済的な喫煙方法であると言える。


水タバコ

エルサレムのバザーに陳列された水パイプ
エルサレムのバザーに陳列された水パイプ

詳細は「水タバコ」を参照

水パイプ、水キセル、シーシャとも呼ばれ、タバコ煙を水にくぐらせた後、極めて長い煙路を経て吸引する。タール分や一酸化炭素を主に、多くの煙に含まれる成分が水に溶けて省かれ、また煙温も低下するので、煙に一定の成分変化があるとされている。トルコなどの中東方面で用いられる大型のものから、中国などアジアで見られる小型のものまでさまざまあり、日本でも吹きガラス製の水パイプなどが存在している。この喫煙に使った後の廃水は非常に有害である。また、吸い口が直接本体に付いているものは梵具(ぼんぐ)と呼ばれる。こちらは煙路は短い。どちらも実験器具の洗気瓶と同じ構造である。

煙管

詳細は「煙管」を参照

煙管(キセル)は日本朝鮮中国で見られる喫煙具。パイプをまねて作られた。雁首、羅宇(らお)、吸口から構成され、雁首の火皿に刻みタバコを詰め、着火する。本来、一息で吸いつくすもので、燻らせるものではない。日本では江戸時代の喫煙は大半がキセルによるものだった。一般的に紙巻きやパイプタバコよりも、葉の刻み方が細かい。一服あたりの平均燃焼時間は2–3分程度だが、使うタバコの葉の量は紙巻タバコの1/4程度に相当で、人によっては(本来の喫煙法ではないが)、紙巻きタバコの吸殻(俗にシケモクと呼ばれる)をこれに詰めて吸う人もいる。


その他 喫煙の他に、タバコを原材料とする製品によるニコチンの摂取方法として、噛みタバコ、嗅ぎタバコなどの方法が知られている。詳細はタバコに詳しい。

健康への影響

日本口腔衛生学会日本口腔外科学会日本公衆衛生学会、日本呼吸器学会、日本産科婦人科学会、日本循環器学会、日本小児科学会、日本心臓病学会、日本肺癌学会の9学会では、喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”として喫煙者は“患者”と発表・表明がなされている[12]。 しかし一方で、タバコは嗜好品という見解も医学界においても依然根強く、そのため禁煙外来における保険適用では問診による選定が行われヘビースモーカーを対象に限定的に行われている。 保険適用に際し、診療報酬について話し合う国の中央社会保険医療協議会の審議では、保険適用に反対する意見も複数の委員から出され「喫煙は個人の嗜好(しこう)である」、「禁煙は個人の責任で、公的保険の給付にはなじまない」がだされた。一方、保険適用推進派の「喫煙はニコチン依存や肺がん、心臓病などを引き起こす病気であり、治療の対象であるべき」との推進の声とがあり、議論は最後までかみ合わなかったという。そのため、現在では保険適用となる対象患者選定のためのニコチン依存症のスクリーニングテストによってニコチン依存症であるかの診断が行われる。また保険適用の条件には医療機関側の施設にも基準が設けられてもいる。


ニコチンには依存性があるので、タバコが健康に悪いと知っていても禁煙が困難である場合もある。
ニコチンには依存性があるので、タバコが健康に悪いと知っていても禁煙が困難である場合もある。

ニコチン依存症

ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。動物実験などの知見からもニコチンは明らかな依存性を持つ。このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通である。 また、ニコチンを過剰摂取した場合、嘔吐下痢縮瞳などの末梢神経症状や、妄想幻覚および錯乱などの中枢神経症状を呈することもあり、場合によっては死亡することもある。

詳細は「ニコチン依存症」を参照


がん 近年、肺がんの主要因が遺伝子による影響が大きい事が明らかになってきた。喫煙をしながら長寿の人、短命の人が確認されており、これらはこれまで個人差としてはっきりとした原因は示されてこなかった。しかし遺伝子研究が進んだ事で、遺伝子による影響である事がわかってきた。肺がんの原因では主に7〜8つの遺伝子が多大な影響をもっており、肺がんにはこれらの遺伝子が主要因といわれている。また喫煙は肺がんリスクの高い遺伝子を持った人が喫煙を続けると肺がんリスクを増大させるとして、注意喚起が行われている。

旧来から疫学研究からも問題が指摘され、日本の2003年の統計では20~24歳の男性が喫煙を開始して肺がんを発症して死亡するリスクは、喫煙者で人口10万人あたり114.0人( 0.11%)、非喫煙者は24.1人( 0.02%)との統計から、リスクは約5倍となる結果が示された。全がんにおいては、10万人中、喫煙者で571.5人( 0.57%)、非喫煙者で347人( 0.35%)との結果からがん罹患率が高い事が示されている[13]


呼吸器疾患 喫煙により慢性気管支炎肺気腫などが生じる。これらの2つの疾患のことを纏めて慢性閉塞性肺疾患COPD)ともいう。軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じている一方、非喫煙者にはほとんど見られない。ヒトのは、数億個の直径約0.1mmの肺胞で構成され、その総面積は約50~60m2であり、この肺胞を介して血液と空気中の二酸化炭素、酸素などのガス交換を行っている。肺胞がタバコの煙に曝露されることで肺胞壁の炎症、破壊が生じ、結果的にガス交換可能な面積が減少してしまう。これが肺気腫の状態である。通常の空気を呼吸するだけでは充分なガス交換を行えず、また肺胞の破壊によって生じた肺の空洞によって胸郭の動きが制限され、呼吸困難となる。重症になると運動制限や酸素吸入を要する状態になる。WHOによれば全世界の死亡率第4位とされ、日本でも患者数は生活習慣病のほぼ倍と言われている[誰?]。喫煙は気管支喘息も悪化させることが知られている。


循環器疾患 タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害する。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症心筋梗塞脳血栓脳塞栓動脈硬化動脈瘤閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されている。高血圧症治療に用いられる、β遮断薬の降圧効果を減じる作用がある[14]


妊娠中の喫煙による影響 喫煙は、妊娠を脅かす最大の防ぎうる危険因子である[15]。周産期死亡の10%・低出生体重児の35%・早産の15%が喫煙に起因するという研究[16]がある。妊娠中に能動喫煙あるいは受動喫煙すると、流産早産の危険性が上昇し、出生後の乳幼児突然死症候群(SIDS)、中耳炎、呼吸器感染症や行動障害などの罹患率が増加する。また、口蓋裂口唇裂[17][18]などの先天異常の危険性も高まる。 禁煙などによる精神的ストレスは喫煙ほど児に多大な影響を及ぼさないことを、英国の疫学研究[19]が示している。日本では母子手帳に「喫煙を直ちにやめる」よう、記載が行われている。


免疫低下・感染症 喫煙は、インフルエンザへの感染リスクも数倍高く、感染症のリスクを増加させる。喫煙者は呼吸器を傷害するなどのメカニズムにより肺結核の危険も高い[20]。また小児において、喫煙環境と中耳炎の因果関係が明らかであるとする意見がある[21]。感染症は、がんなどとならび現代でも死因の大きな割合を占める疾患である。喫煙者は非喫煙者と比べて、肺炎球菌感染症のリスクが2~4倍高い。罹患した場合にも重症化しやすい。ヒトの気道粘膜の細胞は、粘液を分泌し線毛を運動させることで異物を排出する役割を果たしている。喫煙はこれらの細胞を破壊、あるいは機能を低下させるため、ウイルスなどの排出機能が低下する。

免疫系が、遺伝子が変異した細胞を攻撃することで癌の発生を予防する働きを持っているため、喫煙は免疫低下、感染症のみならず発癌にも関与する。このことは、代表的な免疫低下疾患であるAIDS患者において子宮頸がんなどの発生が多いことからも窺える。この事から喫煙者の発癌には免疫低下の関与が指摘されている。

歯科疾患 喫煙は歯肉の血管を収縮させることや、歯肉の炎症後の血管新生を遅らせること、炎症自体を起こしにくくさせることなどから、喫煙者では歯周病有病割合が高く、の喪失本数も多いことが統計的にも示されている。海外では、タバコの容器には、進行した歯周病の写真と「タバコは歯周病を起こす」というメッセージが表示されている国もある。歯周病は、口腔のみならず全身の動脈硬化を促進することから、心筋梗塞早産のリスクを高め、動脈硬化のリスクを相乗的に高める可能性がある。


精神・脳・神経疾患

  • パーキンソン病 : 1960年から2004年の研究を調べたメタ・アナリシスによって性別・年齢に関わらずニコチンがパーキンソン病の防御因子になるとの説が報告されている[22]が、喫煙自体は脳血流を低下させるため、パーキンソン病を含む神経疾患の危険因子とされている[23]

その他の疾患

  • 糖尿病:2007年に発表されたメタ分析[24](対象論文25、調査人数1200万人)によれば、喫煙者は非喫煙者よりも2型糖尿病の罹患率が1.6倍高いという。さらに、喫煙量と罹患率には正の相関があり、特にヘビースモーカーでは罹患率がさらに高いと報告されている。[要出典]
  • 勃起不全(ED):喫煙者は非喫煙者よりも2倍以上勃起不全の罹患率が高いという[25]。喫煙がEDを起こす仕組みは完全には明らかでないものの、血管内皮の傷害による陰茎海綿体の血管拡張障害によると推測されている[要出典]
  • 創傷治癒の遅れ:喫煙者では、創傷部位の皮膚の回復が遅いことが知られており、手術後の回復日数も長いことが示されている。
  • 体内、肌年齢の老化の著しい進行[要出典]

世界の喫煙率

  • 国別にみると、全人口および男性の喫煙率は、東アジアで高く北米やヨーロッパで低い。逆に、女性の喫煙率は東アジア諸国の方が低い傾向がある。WHOの資料(2002年)によると、中国 35.6(男66.9、女4.2)%、韓国 35.0(男65.1、女4.8)%に対し、スウェーデン 19.0(男19.0、女19.0)%、米国 23.6(男25.7、女21.5)%であった[26]
  • 日本での成人の喫煙率は1966年頃(男性83.7%、女性18.0%)をピークに、2009年では全体で24.9%(男性38.9%、女性11.9%)と減少傾向にある[27]。特に60歳以上の男性の喫煙率は、ピーク時の約5分の2に低下している。しかし、他の先進国と比較すると、日本の全人口の喫煙率はまだ高く、特に男性に関してはトップレベルである。一方、女性の喫煙率は欧米諸国の方が高い。
  • 日本においては2004年以降、男性の喫煙率は低下し、逆に女性の喫煙率は緩やかに上昇する傾向が見られている。女性全体での喫煙率は、ここ30年来15%前後を保持しているが、近年20代女性の伸びが顕著である(2003年度調査では23.1%となっている)。
  • 年齢層別にみると、30代の喫煙率が性別や時代に関わりなく高い傾向にある。
  • 統合失調症などの精神疾患患者において喫煙率が高いことが知られている[28]
  • 国内タバコ販売数量は、1996年度の3483億本をピークに少しずつ減少しており、2007年度には2700億本(国産1749億本・外国産950億本)となっている[29]。喫煙率低下の要因としては、煙害の啓蒙、健康志向の普及、公共空間における禁煙区域の明確化、たばこ税増税などが挙げられる。
  • 各国のタバコ消費量上位五位は、1位 ギリシャ(一人当たり年間4313本)、2位 ハンガリー(一人当たり年間3265本)、3位 クウェート(一人当たり年間3062本)、4位 日本(一人当たり年間3023本)、5位 スペイン(一人当たり年間2779本)である。ただし、このデータには英米などが含まれていない。

    詳細は「国別煙草消費概況」を参照

日本の喫煙率の推移
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
喫煙率(男女計) 32.7% 30.9% 30.3% 29.4% 29.2% 26.3% 26.0% 25.7% 24.9%
喫煙率(男) 52.0% 49.1% 48.3% 46.9% 45.8% 41.3% 40.2% 39.5% 38.9%
喫煙率(女) 14.7% 14.0% 13.6% 13.2% 13.8% 12.4% 12.7% 12.9% 11.9%
  • データ出典 JT

喫煙と社会経済

タバコは健康に有害であるほか、喫煙によって直接的ないし波及的に発生する社会的な問題もある。

喫煙による経済的損失 世界銀行は喫煙の全経済効果を分析している[30]。それによると、タバコを経済活動から締め出せば、喫煙者がタバコに費やす金銭は他の商品・サービスに用いられ、新たに雇用と経済活動が生まれ、たばこ産業で失われた雇用を穴埋めできるという。この場合、米国内なら13万人以上の雇用を生み出すという試算[31]がある。米国の試算では、喫煙は毎年1670億ドル(喫煙者一人当たり約3650ドル)の経済損失を生む[32](米国の喫煙者がたばこ購買に使う810億ドル[33]の倍以上)との試算がある。

日本の試算では、厚生労働省が「健康日本21」の中で、喫煙によって国民医療費の5%が超過医療費としてかさむことや、煙草関連疾患による労働力損失を含め[34]、「社会全体では少なくとも4兆円以上の損失がある」としている。また、喫煙による社会損失を年間73,246億円と試算している[35]。その内訳としては直接超過医療費12,900億円、受動喫煙による超過医療費146億円、喫煙関連疾患による労働力損失58,000億円、火災による損失が2,200億円である[36][37]

喫煙と貧困 喫煙は、世界の貧困問題と不可分である。世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において喫煙率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている[38]。複数の研究では、貧しい国の中には家計の約10%が喫煙のために費やされていることもあると指摘されている。そのため、少ない所得から食費・健康管理費・教育費などがさらに削られ、栄養不良・医療費増大・早死・識字率低下をもたらし、社会階層の固定化に寄与している(WHOによる)。世界銀行の出版物[30]は、2020年までには、喫煙で死亡する10人のうち7人は低 - 中所得諸国が占めるようになる、と予測している。

喫煙による死亡数 喫煙は、世界で最大の予防可能な死因であるとされる[39]。しかし、これには異論もあり、煙草による健康被害は疫学上の推測であり、科学的に証明されたものではないため、死亡に至る他の因子があっても、それが喫煙者である場合、喫煙を原因としてカウントする場合があるなど、必ずしも煙草が死亡原因とは言い切れない。

日本では厚生労働省は、「健康日本21」の中で、「最新の疫学データに基づく推計では、たばこによる超過死亡数は、1995年には日本では9万5000人であり、全死亡数の12%を占めている」としている。


側溝にポイ捨てされた吸殻
側溝にポイ捨てされた吸殻

ごみとしてのタバコ

  • 世界中で海岸ゴミを拾っている国際海岸クリーンアップキャンペーンによれば、上位十傑のプラスチックゴミ(2007年現在)を除くと、海岸ゴミの中では製品タバコ関係が最も多く、残りの約三分の一を占める。
  • 札幌市では、吸殻の投げ捨てに対して罰金1000円を課す『ポイ捨て防止条例』を導入したところ、歩き煙草をする人が9割近く減ったことが市の追跡調査でわかり、罰金が煙草のポイ捨て防止に効果のあることが明らかになった[40]。なお、路面、側溝、水路等へのごみの投棄はもとより軽犯罪法で禁じられている。

悪臭源としてのタバコ たばこの煙にはアセトアルデヒドアンモニアスカトールをはじめとする臭いの元となる成分が200種類以上含まれており、消臭剤・芳香剤市場では主な悪臭源のひとつに「たばこの臭い」が挙げられている。アンモニア、スカトールは糞尿の悪臭成分で、それらを燃焼させる事でより強い悪臭として、喫煙者ですら6割が食事中は不快と感じている。また煙にはタールが含まれているため、頭髪や衣服、エアコンのフィルターなどに吸着した臭いは取れにくく、タール分の粘性を媒介に雑菌が繁殖し、さらなる悪臭の源となる。なお消臭対策を行っている喫煙者も存在するが[要出典]、(嗅覚疲労によって)たばこの臭いに無頓着なヘビースモーカーも少なくない[要出典]

火災とタバコ 平成15年版消防白書によると、建物火災の10.6%、林野火災の14.7%がタバコが原因であり、放火に次ぐ主な出火原因となっている。かつてはタバコが出火原因のトップであった。タバコ火災のうち57.8%が投げ捨て、18.7%が火源の転倒、落下(寝タバコなど)によるものである。また放火などの犯罪において、火種としてタバコや喫煙具はよく利用されていることから、可燃性の危険物を安易に販売していることについて疑問が呈されている[要出典]

歩行喫煙

詳細は「路上喫煙」を参照

歩行喫煙は、周囲に煙を浴びせることで精神的苦痛を与え、また、目や喉に肉体的な苦痛を与える。とくに、喉の弱い人(特に老人)、乾燥した環境等にあっては、希望しない煙の吸引により傷害を負うことが少なくない。また、歩行喫煙のタバコの火が、他の歩行者等の人体、衣服等を焦がす等の問題も指摘されている。とくに、歩行喫煙のタバコは、小さな子供等の顔面近くの高さで前後に振られながら移動しており、これが子供に傷害を負わせることがある[41]。こうした問題に対して日本たばこ産業では、喫煙のマナー向上の広告をタバコ自動販売機や電車の中吊り広告等に掲示している。

電子機器に対しての喫煙の害 マイクロソフト社はハードウェアの問題を最小限に抑える方法のひとつとして、コンピュータの周囲で喫煙しないことを薦めている(外部リンク参照)。各金属接点に付着することにより接触不良を起こす原因となる。また空気の通り道にタールが付着することによりそこへゴミが張り付き、温度上昇やトラブルの原因となる。タバコの煙は、かつて汎用機などで使われた半密閉型ハードディスク等に対し特に悪影響があり、その寿命を縮めるといわれた。これは精密機器である磁気記録ディスクの表面にある磁性体の溝が、タバコの煙の粒子より当時は大きく(溝が小さいから不安定というのは誤解)、この溝に煙がかかることで読み書きが安定しないからである。

  • またプラスチック部分の変色をもたらす。

車両運転中の喫煙による事故 タバコやタバコの火またライターを落とすなど、運転中の喫煙は事故の発生源にもなる。タバコの火を消そうとして、大きな死亡事故になった例もある[要出典]。2008年東北道においてタバコを吸おうとライターをつけたところ炎上する事故も発生。車内に何らかの理由で充満していた気化ガソリンに引火し爆発した可能性が高いと警察が発表[要出典]。2009年1月宮城県県道でタバコを吸う際に前方不注意で対向車と正面衝突する事故が発生。被害車両に乗っていた3人が死傷[要出典]

嫌煙・嫌煙権

かつては、喫煙の健康への有害性も知られておらず、職場、家庭、航空機や電車・バスなど公共の場などにおける喫煙が許容されていた。当時、非喫煙者は通常の生活を営むだけで受動喫煙を余儀なくされ、喫煙による健康被害を避けられない状況であった。そのような状況を改善するため、禁煙活動や、喫煙者から非喫煙者が健康被害や臭いの付着等の迷惑を被らないようにする嫌煙分煙とも)活動が行われ、一定の成果をあげた。喫煙は明らかに健康に被害を与える人権侵害行為であり[要出典]、タバコの煙の臭いなどを好まない人も多い。このため、通常の生活を行うだけで非喫煙者が健康被害を受ける喫煙行為に対し一定の規制を行うのは、当然の権利と言える。なお一部の人たち、特に喫煙者においては、「嫌」煙という語感と、喫煙行為を制限されることに対する反発からか、「嫌煙運動」という語から、喫煙行為や喫煙者を憎悪したり中傷したりする活動のことを想起するケースも散見されることから、そのような誤解を避けるためか、近年では「嫌煙」という語の代わりに主に「弱煙」ないし「分煙」と言い換えることもある[要出典](→嫌煙嫌煙権)。

煙や悪臭による不快感や健康への悪影響などについては、WHOや厚生労働省も認めているところであり、喫煙によって迷惑を強いられる側は大きな苦痛を感じている反面、喫煙を肯定的に捉えて擁護する者は、これらの医学的知見を過小評価する傾向が強く[要出典]、その認識には大きな隔たりがあることから、当事者間においてしばしば感情的な対立を招くケースが見られる。このような感情的な対立がエスカレートとした事例としては、1999年に営団地下鉄の車内において喫煙していた者に車内での喫煙をやめるよう注意したところ、アイスピックで左胸を数カ所を刺されるといった事件が発生している[42]。さらに、2008年に埼玉県の路上でタバコの煙を嫌がるそぶりを見せた大学生を殴り、骨折させるという事件も起きている[要出典]

たばこ産業側の動き

アメリカたばこ会社による説明

たばこ会社が、長年にわたりニコチンには嗜癖性がないと主張していたにもかかわらず、実は内部研究によってニコチンの嗜癖性を把握していたことを証明する内部文書が1995年に曝露された[43]。米国のたばこ会社B&W社[44]の、たばこ成分研究に関する1962年から1984年の22年にわたる内部文書が、カリフォルニア大学医学部の5名の研究チームによって暴露された。それによると、同社は、世界中でこれほどに多くの喫煙者が喫煙し続ける理由を研究する中、ニコチンこそが喫煙者に喫煙させ続ける中核因子で、嗜癖性があると知っていたにもかかわらず、1994年、同社を含む7大タバコ会社の最高責任者たちは、「ニコチン嗜癖性はない」と主張した。それらの嘘に対してタバコ会社は1996年、全米各州に約2460億ドルもの巨額の賠償金を支払うことになった。詳細はインサイダー (映画)en:The Insider (film)を参照。またたばこ産業は数百万ドルを投じ、受動喫煙と肺癌の関係を示唆する世界初の平山論文に対する批判キャンペーンを行った。

詳細は「平山論文」を参照


たばこ産業による資金提供

  • カリフォルニア大学のBarnesらは、受動喫煙の健康への影響について1980年から1995年の間に発表された106編の論文を調査したところ、67編(63%)の論文では受動喫煙は有害であるとしていたが、39編(37%)の論文では受動喫煙の有害性が否定されていた。この39編の論文のうち、29編がたばこ産業から資金提供を受けていた。統計的には、ある論文が受動喫煙が健康に害を与えないという結論を出すことと有意に関連した因子は、さまざまな因子のうち"たばこ産業からの資金提供を受けていたこと"のみであった(しかもオッズ比88.4倍と、非常に強く関連していた)[45]
  • 2003年、エンストロームとカバットが「受動喫煙と虚血性疾患・肺癌との関連性は、一般に考えられているより小さいかもしれない」と結論する研究を、たばこ産業の資金援助の下で行い、発表した。これは後に、たばこ会社による詐欺事件裁判[要出典]の判決で、「大衆を欺く目的で科学に操作を加えた詐欺行為の証拠」とされた。

    詳細は「エンストローム論文」を参照

  • 英国の哲学者であるロジャー・スクルートンは、過去にたばこを擁護する内容の記事を新聞や雑誌に投稿していたが、日本たばこ産業(JT)から資金援助を受けていたことが2002年に暴露された。スクルートンは他に、「マクドナルドの製品の方が健康に悪いと印象づけるべきだ」「WHOの信頼性を疑わせるような記事をメディアに載せるべきだ」などの助言をJTに対して与えていた。

詳細は「ロジャー・スクルートン」を参照


日本のたばこ行政

日本ではタバコ事業を管轄しているのは厚生労働省 ではなく、財務省である。海外では、タバコは人体に影響を与える「薬品」であるとして衛生医薬品を管理する厚生労働省にあたる省庁が管理している。また財務省は、日本唯一のタバコ製造メーカーである日本たばこ産業(JT)の筆頭株主たることが義務付けられている。[46]すなわち、筆頭株主が行政も担当しているということになる。また、財務省官僚が退職後に日本たばこ産業に再就職(いわゆる天下り)することが過去にみられている。[47]これはタバコや酒類が課税物資と捉えられているためである。このようなタバコ産業と行政の密接な係わり合いがあるため、日本では禁煙に関する立法および行政活動が大いに遅れたと指摘されている。欧米では国家政策として禁煙を奨励したため、喫煙関連の疾患が減少し、国民の健康の向上および医療費の削減に成功した。また警告表示の管理にあたっているのも財務省である。諸外国と比べ、日本の警告表示には写真等が含まれず、文面も穏やかであることから、警告表示として不十分との批判がある。

日本のたばこ行政に関連し、日本の販売様式の特徴として、歴史的に自動販売機によるタバコ販売が活発であったことがある。これによって未成年に対するタバコ販売の禁止が日本では無意味なものとなっていた。2004年には、全国に約62万台の自動販売機が設置されており、実質的に未成年でもタバコが購入できる状況であった。そのため1996年4月から、タバコ自動販売機を23時~翌朝5時まで稼働停止させる自主規制が行われた。2008年7月よりたばこ自動販売機に「タスポ」による年齢認証を導入されたことから、同年8月1日より自動販売機の深夜稼働自主規制は解除されている[48]

規制・喫煙政策

禁煙」も参照

世界的にみると、公共の場所・交通機関等では禁煙化が進んでいる。日本は先進諸国の中で最も喫煙率が高いが、21世紀初頭から禁煙に関する運動が活発化している。また喫煙による周囲への影響や防災上の理由もあり、企業内での禁煙化・分煙化も進んでいる。病院、飲食店・商店では施設内原則禁煙で、別に設けた喫煙所を提供したり、または空調によって喫煙場所からの煙が他に流れないようにするなどの工夫も見られる。

また、企業の火気取扱設備、危険物取扱設備、製造ライン、倉庫、制御室、研究所等は、防火上や品質、機器のメンテナンス(特にOA設備やFA設備が煙を嫌う。)上の理由で当初から全面禁煙である。一部の企業では、社内を全面禁煙にし喫煙者を採用選考の対象にしない場合もある[49]

公共交通機関病院クリニック1970年代に全面禁煙)は最も早く禁煙が進んだ施設の一つである。

交通機関の喫煙規制

交通機関の喫煙規制」も参照

  • JRの場合、普通列車はほぼ全て禁煙、特急などの優等列車でも禁煙車両の割合は増加している。JRの特急、新幹線は旧国鉄時代の慢性的な赤字の一部をタバコの税収(たばこ特別税)で補填された経緯もあり、喫煙者に対する一定の配慮を行っているが、2005年頃から急速に禁煙化が進んだ。


禁煙タクシーの例(屋根上に禁煙の看板表示がある)
禁煙タクシーの例(屋根上に禁煙の看板表示がある)

禁煙タクシー」も参照

  • 社団法人全国個人タクシー協会の資料によると、2005年3月31日現在の個人タクシー4万4527台のうち禁煙タクシーは1852台、法人タクシーのうち禁煙タクシーは同じく2005年3月31日現在で約3500台である。以前はタクシー内を禁煙にするかは許可制だったが、届出制に変わってから台数が増加している。
  • また、2007年現在、都道府県・市単位で、各タクシー協会に所属する法人タクシーの一斉禁煙化を行う、あるいは検討中のところが増え、2007年度中には関東全域が禁煙化になる見込み[50]

市街地における規制

路上喫煙禁止条例」も参照

  • 千代田区が2002年10月から主要な道路を歩行喫煙禁止にする「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」を施行した。同様の条例が各地で施行されている[51]
  • 静岡市では、2006年10月から、歩きたばこや公共の場所などでの喫煙を禁止する「静岡市路上喫煙による被害等の防止に関する条例」が施行された[53]

中央官庁庁舎は官庁・役所の中で最も禁煙化が遅れているが、厚生労働省は06年4月より庁舎を全面禁煙化した。

学校 文部科学省の調べによると、2005年4月1日現在の全国の国公私立の幼稚園小中高特殊学校における禁煙状況は、敷地内全面禁煙が45.4%・校舎などの建物内禁煙が23.6%、分煙が26.3%となっている。学校での禁煙化の前は、休み時間や始業前・放課後に職員室の自席や控え室などでタバコを吸う教職員が多く、職員室に出向くと室内は紫煙が充満していたが、2003年5月の健康増進法施行(第25条:受動喫煙の防止)以降対策が一気に進んだ。

  • 大学の禁煙化は立ち遅れていたが、若年層の喫煙率の急激な低下やそれに伴う禁煙意識の高まりにより、完全禁煙ないし分煙がここ数年で定着した。

自動車の灰皿

  • 自動車業界では、灰皿は機能部品であり喫煙可能は自動車の機能の1つであるともされ、「灰皿の標準装備は喫煙することができる機能が標準装備されていると同義」であると考えられている。このため全車の灰皿をオプション扱いとすることは困難とし、高級車、大型車などには依然標準装備されているが、全般的に灰皿の存在感を消すインテリアが主流になっている。
  • 女性向け軽自動車小型車ユニバーサルデザイン車を中心に、灰皿を標準装備しない(例えば小物入れなどに交換してある)自動車が増加している。こうした自動車には灰皿がオプションとして設定されている。また、据付ではなく標準装備のドリンクホルダー部分にオプションの灰皿を設置するタイプの車種も存在する。

広告

タバコの箱に書かれるさまざまな警告文(英語)
タバコの箱に書かれるさまざまな警告文(英語)

F1では、以前多くのたばこ会社が車体に広告を出していたが、2006年度以降ヨーロッパをはじめ世界中でタバコ広告が禁止されるようになったことで、たばこ会社はフィリップ・モリスを除き全社がF1のスポンサーから撤退した。現時点で、2005年度以降F1全レースにおいてタバコ広告は存在しておらず、タバコ広告を禁止する法律がないバーレーンでも、フィリップ・モリス(フェラーリのスポンサー)は車体に広告を載せておらず、今後国を問わず全レースで車体に広告を載せない方針であることからF1からタバコ広告が消えることになった[54]

日本では、以前タバコのコマーシャル広告)が放送新聞雑誌などのメディアで頻繁に行われていたが、青少年の喫煙を促すとともに健康への悪影響を懸念する意見が多くなったことから、段階を追ってコマーシャルを規制する動きが出ている。

まず業界の自主規制として、

  • 1985年4月から特に未成年者が多く視聴すると想定される18時~21時の時間帯のテレビコマーシャル放送、並びに女性・少年向け(読者層の50%以上が未成年のもの)の広告掲載禁止。また未成年者に人気のあるタレント等をCMに起用してはならない
  • 1987年女性が喫煙するシーンの使用禁止
  • 1989年テレビコマーシャルの放送禁止時間を早朝5時からに拡大
  • 1995年10月より週末(土曜、日曜)の放送媒体を使ってのコマーシャルを終日禁止。平日についても放送禁止時間帯を23時まで拡大。また学校の正門から100m以内の地域に屋外看板広告を掲出することを禁止
  • 1998年4月テレビコマーシャルでのタバコCMを放送禁止。
  • 2002年6月少年向け雑誌の広告規制を読者層の25%以上が未成年のものに強化
  • 2005年4月、放送媒体でのタバコのCMを全面禁止

2004年10月以降は指針改正により、

  • これまで自主規制だったテレビラジオインターネット映画上映前広告などでの広告の法的禁止
  • 駅構内・電車やバスタクシーなどの公共交通機関や、屋外看板における広告の禁止(ただし、たばこ販売店での広告・自動販売機に貼付する広告は残存)
  • 新聞での広告の制限(1年間で1社当たり12回以内)
  • 味のテスト用見本たばこ(街頭でのサンプリング)の配布は、成人のみが利用できるところに限る(かつては秋葉原駅前などで良く行われていた)

などが順次実施されている。

  • テレビCMが行われた頃、CMの冒頭、または末尾に「未成年者の喫煙は禁じられています」という文言を入れていた。後年はこれに加え「健康のため吸いすぎに注意しましょう」、あるいは「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」という文言が追加された。
  • 通信カラオケシステムの背景映像に、普通列車の車内で喫煙しているシーンが映し出された映像がかつて使用されていたが、普通列車全面禁煙化にともない、別の映像に差し替えられたケースがある。しかし、最近DAM等の機種で採用されている歌手本人出演映像で歌手が歩き煙草をしているシーンが映し出されたりしているケースがあり、カラオケの背景映像で喫煙シーン自体を自粛する傾向は未だあまり広がっていない。
  • 2004年に入ると、日本では日本医師会が「たばこをやめましょう」のキャッチフレーズで、禁煙を呼びかけるテレビコマーシャルの放映を開始した(ただし、「医師の中に多数の喫煙者 - ともすれば愛煙家が存在するため、非常に説得力に欠ける」との批判が少なくない)。


各国の警告表示

詳細は「タバコ警告表示」を参照

主要国ではタバコのパッケージに「喫煙すると人体に害を及ぼす」旨の警告文が表示されるようになった。

日本においては、たばこ規制枠組み条約が発効された2005年より、タバコの広告や包装には、たばこ事業法第39条と、これに基づく財務省令(同法施行規則第36条の別表第一・第二)で規定され、「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。」など8種類ある警告文のうち、別表第一・第二から各1種類ずつ、計2種類を、タバコ製品の包装の主要な2面へそれぞれ30%以上の面積を使って表示することが義務づけられている。

以下、各国の表示の例である。

  • Smoking kills(喫煙はあなたを殺す・EU)
  • Where there's smoke, there's hydrogen cyanide(タバコ煙のあるところにシアン化水素(青酸ガス)がある・カナダ)
  • Smoking causes blindness(喫煙は失明の原因となる・オーストラリア)
  • 行政院衛生署警告:孕婦吸菸易導致胎兒早產及體重不足(妊婦が胎児に煙をもたらすことで早産や低体重児出産を招く・台湾)
  • 건강을 해치는 담배 그래도 피우시겠습니까?(健康を害するたばこ、それでも吸いますか?・韓国)
  • 喫煙は心臓発作の原因となる・ブラジル
  • Курение — причина раковых заболеваний(喫煙はがんの原因となる・ロシア)


各国における喫煙政策

詳細は60カ国以上の喫煙抑止策を参照
  • アメリカ大陸
  • ヨーロッパ - 紙巻きタバコに関しては、概して非常に高額なたばこ税が課されている(ただし、原価や利益率等が高い場合や、物価自体が高い場合もあり、そういった場合は、相対的に安く感じるため、一概には言えない)。ただし、手巻き煙草やパイプ煙草等はそこまで高くない場合が多い。
    • フランス - 2007年2月に空港や病院、学校、駅(プラットフォームを除く)などの公共空間における禁煙が定められ、違反者に対する罰金も設定された。2008年1月からは公共の場所、及び飲食店での喫煙が全面禁止となった。詳細はen:List of smoking bansを参照
    • イタリア - 2005年1月10日から「禁煙法」が施行され、それまでの公共施設・機関のみならず、全ての屋内及び公共の場での喫煙が禁止されている。違反者には27.2~275ユーロの罰金が課せられ、周囲に子どもや妊婦がいた際には罰金がさらに倍額となる。[55]
    • イギリス - 2007年から、全飲食店、職場、交通機関を含む屋内の公共空間の喫煙が一律禁止。喫煙室などの設置は禁止(例外として刑務所、ホテルの客室、精神病院、介護施設、海上油田掘削基地潜水艦内は分煙が許される)。また同年10月より、18歳未満の者へタバコを販売することは如何なる理由であっても違法となった。
    • アイルランド共和国 - レストラン、パブ、企業、社用車を含む屋内の公共スペースは全面禁煙。喫煙室などの設置は違法(刑務所、ホテルの客室、精神病院、介護施設は例外)。違反者には€3,000以下の罰金。
  • アジア
    • 中国 - 2005年にたばこ規制枠組み条約を批准した。2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博などを控え、禁煙の法整備が進んでいる[56]
    • シンガポール - レストラン、ホテルなど屋内のほとんどが禁煙。吸殻に限らずいわゆるポイ捨てをすると高額の罰金(場合によっては鞭打ち刑)を課されるため、事実上路上喫煙も不可能。詳細はen:List of smoking bansを参照
    • 大韓民国 - 鉄道各線、地下鉄、バス、飛行機(国内線)はすべて禁煙で、高速列車「KTX」にも喫煙席の設定はない。駅についてはホームは全面禁煙。駅舎は喫煙室以外では全面禁煙。
    • 朝鮮民主主義人民共和国 - 2004年、国の最高指導者である金正日総書記が20年間かけて禁煙に成功した事により政府は「禁煙統制法」を発令した。官公庁の施設からの灰皿の撤去、禁煙地域での喫煙に対する罰金化、喫煙者の大学入学資格取り消しなどの規制がされた。禁煙に成功した金正日は「タバコは心臓をねらう銃のようなもの」という発言をした。
    • タイ - 空調の効いた公共的な建物(空港、駅、バスターミナル、レストラン、ショッピングセンター等)はすべて禁煙。鉄道、バスの車内も禁煙。
    • ベトナム - 公共的な建物(空港、駅、バスターミナル等)は禁煙。
    • ブータン - 国内全面禁煙を目指しており、2004年よりブータン国内におけるタバコ販売が一切禁止された。海外観光客のタバコ持ち込みは可能だが、ブータン国民が個人輸入・持ち込みをした場合は100%の関税が課される。

備考

煙草・喫煙に関する様々な社会現象を取り上げる。

  • 天皇、皇后が各地を訪問した際の関係者(警備の警察官など)や、皇居の清掃関係者などに対し、皇室が感謝品(一種のノベルティ)として配布されてきた「恩賜のたばこ」(菊のご紋章の入った特別仕様品)について、タバコを吸わない人(非喫煙者)への配慮などから、2006年末をもって菓子金平糖の詰まったボンボニエール)への切り替えが行なわれることとなった。
  • 世界禁煙デー5月31日から1週間は日本では「禁煙週間」とされている。
  • 禁止除草剤混入事件

昭和62年にアメリカ国内で販売が禁止されている基準値0.5ppm以上のダイカンバ(除草剤)に汚染されたタバコが国内に輸入され、141万本が日本国内に出回る事件が起きた。この事件については、昭和62年6月5日の参議院決算委員会において、旧大蔵省及び外務省が5月20日の段階でこの情報を知りながら、回収を行わないまま調査結果を内密にするよう米政府に要請していたことについての質疑が行われている。[57]

  • Doll R, Peto R, Boreham J, Sutherland I. Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors. BMJ 2004;328: 1519-28. BMJ 40代までに禁煙すると寿命が10年延びる。英国の医師を被検者とした大規模追跡調査結果
  • Thun MJ, More misleading science from the tobacco industry. (Editorial)BMJ 2003;327:E237-E238 BMJ たばこ産業の発する誤った“科学”

脚注

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関連項目

外部リンク

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